高田耕造商店

株式会社コーゾー

1930年頃から棕櫚(しゅろ)製品を作り続けている高田耕造商店さん。棕櫚はヤシ科の常緑高木で、幹を抱くように巻いている樹皮は腐りにくく伸縮性に富み、古くから繊維を取るのに重宝されていました。高田耕造商店さんでは、古くから伝わる技法を用いて職人の手によりひとつひとつ丁寧にものづくりされています。固く、ごわごわとしたイメージが定着している「たわし」。そんなイメージを覆すかのような、手肌にも環境にも優しい棕櫚たわしは、自然素材の優しさと、先人たちの育んできた知恵を現代の生活に合わせて共有するという高田耕造商店さんの理念を体現する逸品。毎日使うものだからこそ、使う人にも、モノにも、環境にも優しくありたいと願う、暮らしに密着したブランドです。

 1. 棕櫚を熟知した土地柄

かつては、紀州(和歌山)の重要な産物であった棕櫚(しゅろ)。しかし、輸入品の棕櫚やパームヤシなどにとって代わられ、国内で棕櫚を手入れする農家が減少し、棕櫚山が少なくなっていきました。これからも紀州(和歌山)の伝統の棕櫚産業を守っていくためには、まず、棕櫚山を守らなければならない。そんな想いを胸に、高田耕造商店さんは棕櫚山育成プロジェクトを立ち上げ、良質な棕櫚の栽培までも長い年月をかけて行っている、そんな棕櫚愛ある会社です。
今回、YAOCAで取り扱わさせていただく高田耕造商店さんの道具は、鍋やフライパンのお手入れ時にお使いいただきたいこともあり、国産のものよりややコシがあり、耐久性のある輸入棕櫚を使用しているものになります。どれも用途から素材を厳選して丁寧に作られているので、安心してお使いいただけます。

 2. 棕櫚の繊維がたわしに

まずはじめに、天然の棕櫚繊維の束をたわしの寸法に合わせて裁断機で裁断します。それを専用の機械にセットした、折り曲げられた針金の間に職人さんの手の感覚ですき間無く挟み込みます。そして、何度も指先で繊維をほぐしながら均一な厚みになるように調整します。厚みが揃ったら、ハンドルをグルグルと回して針金に棕櫚を巻き込み、棒状に仕上げます。棒状の棕櫚をさらに刈り込み機で綺麗に刈り揃えて棒たわし、つまりたわしの原型の出来上がりです。ここからはそれぞれの用途に合わせてこの棒たわしを変形させて仕上げています

3. むすびができるまで

小さくて小回りがきき、密着性があって、鍋などを傷つけず、使っていて気持ちが良い「たわし」を作って欲しいとの要望から、それらすべてを兼ね備えた今までにない新しい形、「むすび」が誕生しました。これが誕生するまでには1年以上もかかったと言う渾身の一品。使っていただくことで必ず納得していただけること請け合いです。試行錯誤して、試作を重ね、1年以上。まずは金具が表面に出ない形状で、より要望に近づけるためにはと考えます。もっと全面を使えて、もっと手に馴染む形。どんどん理想に近づいてはいきますが、でもまだ何かが違うと繰り返し検討が続きます。行き着いたのは以前、何かたわしを使って安全に遊べるおもちゃをと試作していたことを思い出します。それは知恵の輪のようにして遊ぶおもちゃのたわし。そこからヒントを得て、今の形に至るという開発秘話には驚きました。どの面でも使うことができて、消耗が少ない、長く使える「むすび」は、2020年度のグッドデザイン賞を受賞したほどの新しいたわしです。

4. ささらのこと

縦に長い形の「ささら」は洗剤のなかった時代からの掃除道具。ご紹介する高田耕造商店さんの「ささら」は、キッチンで使うことを考慮して、適度にしなってコシのある棕櫚を用い、結びには耐熱性、耐食性、強度に優れ、緩むことなくしっかり結べるステンレス線を使用しているので、安心してお使いいただけます。また、1箇所ごとに巻き始めから巻き終わりまでを一本で締める「綴り(つづり)」という匠の技でしっかり締め込んでいます。だから先端がすり減ってきたら1つの結びを解いて、棕櫚をハサミで整えることで、新品同様にまたお使いいただけます。掃除する道具も大切に最後まで使う。そういう昔の知恵を今に伝えるって良いですね。

5. 鍋敷きのこと

棕櫚縄が主役になる、棕櫚の鍋敷きが作りたい!から生まれた、手編みの鍋敷き。それを形にしたのがまさにこれ。たわしには使わない棕櫚の繊維を捨ててしまうのは勿体ない…と、さらに綺麗に紡いで縄にしてから編んで仕上げる、手を掛けることを惜しまない、素材を大切に扱う高田耕造商店さんならではのアイテムです。棕櫚縄を手編みで編み込んだ鍋敷きは、職人がひとつひとつ丁寧に力一杯締めながら編み込んでいるうえに、芯材に木を使っているので、どっしりとした安定感があります。また中央にはドーナツのような穴があるので、底が丸い土鍋でもしっかり包み込むように支えてくれます。素朴な風合いが魅力的の天然素材の鍋敷きは、熱い鍋を置くと変色しやすいのがネックですが、棕櫚は天然素材ながら熱い鍋を置いても変色しづらく、きれいな状態で長く使えるのも嬉しいポイントです。


高田耕造商店の作り手のこと


全ての画像提供元:高田耕造商店

厳選された品質の高い材料、そして長年受け継がれてきた職人たちの繊細な技。そのどちらが欠けても、高田耕造商店さんの品々は作ることができないと言います。それだけ素材も人も大切にされているのだと思います。だからそんな高田耕造商店さんの道具はどれも人の手の温もりがある素敵なものばかりなのだと思います。効率だけを考えれば、たしかに機械で生産した方がたくさん作れるかもしれない。でも、使い手の方々に毎日安心して使ってもらえるものを、10年、20年と長くお役に立てるものを。という視点で考えた時、先人たちが守り続けてきたやり方が、その答えであると確信して日々モノづくりされているそうです。人が作る、人の道具でありたい。70年あまりに渡って守り続けてきた想いと職人の技を次代に受け継いでいくことで、毎日に寄り添い続けたい。そうしてまたひとつのたわしが出来上がっていきます。

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