和田助製作所

ものづくりのまち燕三条

燕三条は、新潟県のほぼ中心「県央地区」に位置しており、信濃川や、越後平野が望める国上山(くがみやま)など自然に恵まれた土地です。この燕三条では刃物・金物や洋食器の生産が盛んなエリアとなっています。燕三条市という地名はなく、燕市と三条市を合わせた呼称です。
近年では産地イベント「燕三条 工場の祭典」が行われており、新潟県燕三条地域の多くの工場が一斉に工場を開放し、工場でのものづくりの工程を見学・体験できるイベントとして、全国的にも注目を集めています。

自社技術を活かした商品づくり

画像提供元:株式会社和田助製作所

燕三条は、金属加工技術を持つスペシャリスト達が集まるエリアになっています。この金属加工にはたくさんの工程があり、加工技術毎に特化している工場に外注して商品を製造していることが燕三条の特徴でもあります。今回ご紹介する「株式会社和田助製作所」さんでは燕市に2つの工場を持ち、プレス加工から溶接、研磨、包装など全て一貫して、自社工場にて生産を行っています。
こうした工程を自社で全て行うことで、商品製作に時間的ロスが生まれない為、出来上がるまでの日数を短縮することができ、円滑な生産管理と安定した品質と商品供給を実現しているそうです。

極厚の鉄丸フライパン

約40年前、当時の開発担当者の方が、「鉄のフライパンで極厚な物があれば、料理がもっと美味しく、楽しく、便利に出来るのではないか」と考えたのがそもそもの始まりだったそうです。
底の板厚が厚いことで、じっくりと熱が伝わっていくので熱ムラが出来にくく、食材を美味しく調理してくれるのが「鉄丸フライパン」の特徴です。
この鉄丸フライパンの特徴でもある板厚はどのようにしてつくられているのでしょうか。
板厚:底面3.2mm
まず、「シャーリング」と呼ばれる工程で、鉄板を設定した長さにカットします。次に「ブランク」と呼ばれる特定の形状に材料を切り抜く作業を行います。その後、「鉄丸フライパン」の特徴でもある厚みを保ちながらプレスする「スピニング加工」を行います。一般的なプレス加工では鉄板を金型で圧着させて形にしていくのですが、この一般的なプレス加工では「厚み」を保ったまま形にすることができない為、試行錯誤しながら現在の加工方法である「スピニング加工」にたどり着いたそうです。この加工は金属をロールで伸ばしながら型に合わせて成型することで、底の板厚を保つことができる方法です。
その後「削り」と呼ばれる工程で、フライパンの形状を削って整えます。この工程で製品の形が決まります。次に表面をサンドペーパーで磨きます。この際にラセン状のラインが入ることから、この工程は「ラセン」と呼ばれています。その後、フライパンに取っ手を付ける穴を開け、開けた穴に鋲を入れ、取り付けます。最後に、バリやスレ、傷、汚れが無いか一つ一つ検品を行い、包装して商品が完成します。
同じ材料、工程でも、仕入れた鉄板や気温、機械の調子など僅かな誤差で不良が出る場合もあるため、
職人さんはその時のベストな体制で作業を行っています。日々変わる状況を見極め、品質を守るその一つ一つの積み重ねが技術の向上につながり、和田助製作所さんの商品を支えています。

作り手みなさまのこと

「株式会社和田助製作所」さんは創立者である和田 助治郎(SUKEJIRO WADA)さんが新潟県燕市で1923年(大正12年)に創業されました。業務用金属器物の製造・販売を行っている会社で、燕市に2つの工場を持ち、プレス加工から溶接、研磨、洗浄、包装と全て一貫して、自社工場にて生産を行っています。主要設備だけで17以上の金属加工が行える機械・機具を有し、業務用を中心とした調理器具は2000点以上あり、流行にとらわれることのないシンプルなデザインと確かな品質を目指し、「プレス部」、「溶接部」、「研磨部」、「品質管理兼包装部」、「営業」、「現場事務部」、商品に関わる全ての方たちのちからで、プロの料理人をはじめ、多くの方にご満足いただけるよう、自社技術を活かしながらより良い商品づくりを行っています。
和田助製作所さんのものづくりの精神として、「何でも試してみる事!」が受け継がれています。“もっと製品を綺麗にできないか” “もっと製造工程の技術を上げられないか”などを日々考え、安全第一に作業をされております。上司や先輩社員の教えはもちろん、見て盗む、真似る等、個人のスキルを上げる為、個々が高い志を持って技術を磨いているそうです。

WADASUKE エピソード

たとえば、勤続44年の大ベテランHさん、元工場長のお話です。元工場長Hさんは、プレス加工~研磨作業まで一貫してできる技術者のスペシャリストです。とある日、お客様から20数年前に作ってもらった物に手を加えて、オリジナル商品を作って欲しいとの依頼があったそうです。当時の担当者の方が既に退職されており、社内で右往左往していたなか、元工場長Hさんに助け船を求めたところ、「あ~この商品か!懐かしい。この商品は、あれをこうして、こうやって、こうするとこうなる。」「さらにこれを加えれば新たにできるよと」と一言。元工場長Hさんが経験されてきた記憶と、長年培ってきた技術が身体に沁みついていた事で、ご要望頂いたお客様の声にお応えすることができ、結果、喜んでいただくことができたそうです。とても良いお話を聞くことができました。長年培ってきた技術や経験は財産だと、このお話を聞いて改めて実感しました。また、何十年も前の商品のオリジナル製作の要望にも真摯に対応する姿勢も素晴らしいなと感じました。みなさまがものづくりに真摯に向き合い、日々技術を磨いている職人さんがいて「和田助製作所」というブランドを守り続けているのだと感じました。

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