信州木曽のこだわりの木製品「山一」

長野県木曽郡南木曽町で、伝統的な木製品から現代的な木のクラフト製品までを幅広く製造している山一さん。樹齢100年から300年の木曽原木を有効に活用し、”木の香りとやさしさを生活にする”ものづくりをされています。長い時間をかけて木を育て伐採し、また植林するというサイクルの中で、日々木と向き合う姿がここにあります。
今にも木の香りが漂ってきそうな山一さんについてご紹介します。

”木曽路はすべて山の中である” 島崎藤村の「夜明け前」の有名な一節の通り、信州木曽は高樹齢の大木が生い茂る土地です。木曽ひのきは、長野県と岐阜県にまたがる「木曽谷」に育つ天然ひのきだけを指します。江戸時代に尾張藩が木曽谷の森林を保護するために設けた”ひのき一本首ひとつ、枝一本腕一本”つまり「ひのきを一本伐採した者は斬首、枝を一本切り落としたものは、腕を切り落とす」という、木曽五木（「ひのき」「さわら」「ねずこ」「あすなろ」「こうやまき」）の保護を目的とした厳しい掟で庶民の伐採を御禁制にするほど、大事にされてきました。それが功を奏して、今現在も恵まれた土壌で日本の三大美林の”木曽ひのき”として多くの良質材が収穫されています。傾斜が険しい木曽の山は、雨が多く、特に冬は厳しい寒さと深い雪に包まれます。そんな厳しい自然環境の中で、木曽ひのきは他の場所で育つひのきの2〜3倍もの時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと育ちます。その時間こそが、木曽ひのきの緻密で美しい年輪を刻みます。恵まれた土壌と厳しい気候により多くの良質材が生まれるのです。

信州木曽の土地では、常緑針葉樹林の木曽五木（「ひのき」「さわら」「ねずこ」「あすなろ」「こうやまき」）が木曽谷の木として大切にされています。特に、日本の三大美林と言われる「木曽ひのき」は、建築材の最高級品として扱われるほど貴重なもので、古来より大切に育林されてきました。日本書紀にも「杉と楠は船に、桧は宮殿に、槙は棺に使いなさい」と書かれているほど、ひのきは昔から建設用として最適で最高の材であることが知られていました。20年に一度行われる伊勢神宮内宮の遷宮の際にも「木曽ひのき」が使われています。
日本最古の木造建築でも使われていた「ひのき」は耐久性があり、木肌が滑らかで美しいのが特長です。中華せいろなどの曲げ加工もしやすく、光沢があり美しい仕上がりになります。また樹脂成分を多く含み、他素材と比べて、高い抗菌性を持ち、衛生的です。

良質な木材の産地には腕の良い職人が集まるとは良く言ったもので、江戸時代から木曽には腕のいい職人が集まり、木材に精通し、技術を磨き、多くの木製品が作り続けてられています。
山一の職人たちは“人の命の何倍もの長い時間を風雨に耐えて生きてきた木に申し訳ないものは作らない”と口々に語ります。その信念と、木への感謝の気持ちが、手間のかかるこの手仕事を支えているのでしょう。その想いと伝統、技術は継承され、作り続けられていきます。木曽の良質な木を活かした山一の中華せいろは、しっかりとした佇まいで私たちの暮らしの中に根付き、ずっと使い続けたい道具のひとつになることと思います。